アラスカ観光 その2


翌朝。
キーナイ旅行に行くために、ヨーヘイ達の泊まっているB&Bに迎えに行った。
湖畔にある『Anchorage Lakeside Jewel B&B』

裏庭からすぐ湖にアクセス出来るB&B。
そしてスイートルームは、4人まで泊まれるからお得。
ベランダから見た風景はこんな感じ。

いいね〜。
私でも泊まりたい。



一行は、アンカレッジからスワードハイウェイを南に下り、キーナイ半島を目指す。
怪しい雲行き。
と思ってきたら、激しい雨になった。怖いくらいの大雨。


雨の中をひたすら南へ。
そのまま今夜泊まるロッジに行く予定だったけど、早く着きそうなので車の中で予定変更。
スワードへ向かう事にする。


雨の方は徐々にあがり、一同ほっと一安心。
ムースパスという所にあるキャンプ場に寄ってみる。動物でもいないかな。



ヨーヘイのアラスカ旅行の希望は、ブルーベリー摘みとムースを見る事だけだった。
ムースを初日から探しているが、まだその姿を見かけていない。
探さない時はよく裏庭に出てくるのに、探すといない、ムース。
とにかく、旅行中に何か動物を(出来れば大きな動物を)見せられますように。


キャンプ場から川の方に行ってみると、木に登るリスがいた。
大興奮でカメラを構える、日本人観光客達。
続いて、野うさぎ発見!!

か、可愛い〜。
いい感じだ。よしよし、だんだん動物のサイズが大きくなってきてるぞ。
ムースも近いか!?


そして道に戻る。アンカレッジを出て4時間くらいで、スワードに到着。
スワードでいつも行く、アラスカ列車を使ったレストランでランチタイム。

その後、スワードにあるイグジット氷河へ行ってみる事にする。
歩いて近くまで行ける氷河らしい。私達も行くのは初めてだ。


途中、道から氷河が見えた。

おお〜。なかなかいい眺めだ。
氷河の青って美しいね。

もっと進むと、氷河への入り口。そこにはたくさんの観光客がいた。
こんな山道を歩き、氷河を目指す。

だんだんと氷河に近づいてきた。

すごいよ、すごいよ。

目の前に氷河が迫ってくるよ。
なかなかの絶景。スバラシイ。


氷河をたっぷりと堪能した後、今日のお宿、クーパーランディングの『KENAI PRINCESS WILDERNESS LODGE』へ。

旅行計画を立てる時、4日間しかないので、デナリよりもこのキーナイの方を選んだ。
キーナイの、グレイシャーミルクと呼ばれるエメラルドグリーンの水の色が、私は大好きだ。緑の山の中に、このエメラルドグリーンの水の色が映えて、何とも言えない美しい景色を作り出す。

その風景を見下ろせる、ぎんだらぎんさんお勧めのこのロッジ。夏の間インターネットで予約すると、水曜日は$100オフになる。お得情報〜

ロッジから、すぐ川まで降りられる。
そこの透き通った水の中に、レッドサーモンを見付けるヨーヘイ達。
アラスカだねぇ。
ロッジの外でこんなカーリングみたいゲームをしたり、山にいるドールシープを双眼鏡で見たりした。

なかなか日が暮れないが夜の10時に日が傾き、山を黄金色に照らしたりして、ますます美しいキーナイの景色だった。

アラスカ観光 その1


弟のヨーヘイとその友達3人が、アラスカに初めて遊びにくる事になった。
買ったチケットは「JAL直行便 アラスカ7日間フリープラン」というもの。

東京からたった7時間でやって来られる、お得なチケット。
しかし自由な時間は、4日間と半日のみ。いったいその間に、どこに連れて行こうか?


私達に任せるという事は、ある程度の冒険は覚悟しなければいけない。
『四駆バギーで駆け抜けるアラスカの原野キャンプ』というのをリーガンがはりきって計画していたのだけど、



トイレがない所でキャンプなんて出来ない。


などと言われ、敢えなく却下となった。
リーガンは、すっかりやる気をなくしてしまった。


この話を友人達にしたら、みんなブーイングの嵐。
「キャンプが出来ないなんて、アラスカに何しに来るつもりだ!?」
声を揃えて言っていた。

友達は特にアウトドアを好む人達でもなく、普通の主婦仲間達。
なんか嬉しい。
こういう反応をする人達が住んでいるアラスカ、やっぱり好きだな。



『冒険』ではなく『観光』でという方向で、旅計画を考える事にした。
友人のぎんだらぎんさんが、ご両親を観光に連れて行った時の日程表を見せてくれて、それがとても参考になった。と言うかキーナイ旅行は、同じ行程をそのまま辿らせてもらう事にした。



ヨーヘイとその仲間達のアラスカ上陸日。
お昼頃に、アンカレッジに着いていると電話があった。
ヨーヘイの友達のケンイチ君が、海外でも使える携帯を持っていたので、連絡は便利だ。
その日泊まる予定のホテルまで迎えに行ったが、時差ぼけで疲れているようなのでお茶だけ飲み、夕食にまた会う予定となった。


夕食は、Moose's Tooth というレストラン。人気のピザのお店だ。

1時間の待ち時間。
待ってる間に、ベルーガポイントまで軽くドライブした。
美しいターナゲン入江が目の前に広がる場所だ。残念ながら、ベルーガは見えなかったが。

レストランに戻り、ピザを注文。
半分ずつ味の違うLサイズのピザを3枚。

どどーん。
アメリカンサーイズ!


このデカさに、みんながかなり驚いていた。


翌日はイサオさんに運転手兼ガイドになってもらい、フラットトップにブルーベリー摘み。
キャンプがなくなった今、これがこの旅行の最大のボウケン。雨が降ろうと、必ず行かなければ。

まずはTommy's Burger Stop(1106 W 29th Pl Anchorage)で腹ごしらえをし、山方面に車を動かす。


美しい山の風景の中で、そこら一帯に生えているブルーベリーを摘む。

ブルーベリーはそのままでは日本に持って帰れないので、その2日前に一度家族でここに来て、3時間かけ4kgも摘んでいた。そして、すでにお土産用のブルーベリージャムを作ってある。

ブルーベリーをたくさん摘んだら、ジャムと交換してあげるという約束だ。
みんな、真剣に摘んでよ。

フラットトップから帰ってから、家でホームパーティー。
ぎんだらぎんさん家族と、くまさん夫婦も来てくれた。


次々出てくる鮭づくしの豪華な料理。

サーモンディップ、サーモンジャーキー、カリブーのソーセージ、くまさん特製イクラ&スモークサーモン、ヨーヘイ達が運んでくれた実家特製の米、サラダ、鮭の照り焼き、鮭のオリーブオイル焼き、そして鮭の天ぷらにブルーベリーアイス。



どうだ、参ったか。



メインシェフは、ぎんだらぎんさん。
たくさん食材を持ち込んで、テキパキと料理してくれた。
すごい。貴女はさすが、仕事の出来る女。


そしてもう1人。キッチンの片隅で天ぷらを黙々と揚げる男。

イサオさん、貴方にはテンプラ職人の称号を与えよう。


食事が終わると、リーガンが作ったブルーベリーパイとアイスクリームを食べながら、スライドショーが始まった。
テーマはもちろん「チャーリー&ユーコン川下りの旅」。

なかなか楽しい夜でした。
アラスカ観光は、まだまだ続く。

サーモン ディップネッティング


川下りから帰った同じ週末、友達のくまちゃんがディップネッティングに連れて行ってくれた。

ディップネッティングとは、大きな網で魚を捕まえること。
私達はくまちゃんに教えられたとおり、チェストウェイダーやディップネットを買って用意していたのだ。(ディップネットについて詳しくは、くまちゃんのディップネッティングのページを見て下さい。)


今まで魚釣りに行っても魚を釣った事がないメルモ家族。
それでも、網ですくうんならきっと獲れるんじゃないか。

いや、これだけお金をかけてるんだから、必ず鮭を獲らなければいけない!


川下りの疲れもまだ取れてないが、かなりの使命感に燃えて、キーナイリバーへと向かったのであった。




キーナイに着いて、ディップネッティング場を探した。前夜に出発したくまちゃんとは、トランシーバーで連絡を取り合う。
そこは、知らなければきっと行けない、ディップネッティングの看板も何も立っていない場所。

着いてびっくり。
今まで見た事もない景色が広がっていた。

すすす、すごいんですけど。
大きな網を持った人々がたくさん、川の中にきれいに並んでるよ。


なんだか興奮。
私も急いでウェイダーを着て、水の中に入ってみた。

水の中に入った途端、驚いた。
ウェイダーの中の空気が、全部吸い込まれる感じだ。
かなりのバキューム感。
なんなんだ、これは。

自分が真空パックにされてるよ。


水圧と戦いながら、大きな網を持って水の中に立つ。
簡単ではない。
しっかり立ってないと、流されそうな勢いだ。
そして網は、重くて持つだけで大変。
腕をプルプルさせながら、懸命に網を持つ。

これは、痩せるかもしれない。



くまちゃん&くまちゃん夫のネモト君にアドバイスをもらいながら、頑張った。
何人か、鮭が網に入り浜辺まで引きずっていってる人を羨ましく見詰めながら、ずっと網を持っていた。



結果その日は残念ながら、鮭は私の網には入ってくれなかった。







まさかの、収穫ゼロ。


くまちゃん夫婦は、前日と朝に、何匹かの鮭を獲っていた。
キャンプの用意をしていたけど、疲れていた私達は、たった3時間で諦めてしまった。


しょうがない。
また3時間半の道のりを、悲しい気持ちでアンカレッジまで帰っていったのだった。








そしてよく週末、リベンジ。

今度こそ、獲るよ。
川下りの疲れもすっかりとれたし、気合は充分。金曜の夜から浜辺でキャンプをしながらの、長丁場で挑戦だ。
夜の8時半、到着。
その日は約束してなかったが、やはり来ていたくまちゃんと浜場で会った。


リーガンがテントを張って用意している間の2時間、私が川に入って網を持つ。
でも、収穫はやっぱりゼロ。


寒くなったので、テントの中に入ってリーガンと交代。
テントの中から川にいるリーガンの様子を見ていると、10分くらいで何やら慌しい動きをしだした。
浜辺にいるくまちゃんに、ガッツポーズしている。



これはついに、獲ったか?

子供達と走って行ってみた。

リーガン、鮭ゲーーット!!

やった。ついにやったよ。
その後、制限時間までの15分の間に、2匹の鮭を獲ったのだった。



翌日も、リーガンは大漁。
朝からどんどん鮭を獲る。


私はというと、川に入っても、一匹も収穫がないままだった。





しかし、お昼頃。
リーガンがランチを買いに行ってる間、ついにきた。
びりびりと、網に鮭が入る感触。


必死になって浜辺まで網を引きずっていった。
とうとうやった!私も鮭ゲット!!


浜辺にいたくまちゃんが、気付いて私の所まで走ってきてくれた。


大騒ぎの私達。
まずは獲った鮭をワカーで、トドメをささなければいけない。

隣にいたお兄さんが、
「手伝おうか?」
と声をかけてくれた。


私が答える前にくまちゃんが、

「いいの。これは彼女の初めての鮭なの。
彼女が自分で全部処理するから!」

と、叫んでいた。






く、くまさん?
私は、お兄さんに手伝ってもらいたかったのに...。




「いいから早く。これ持って。」
と、くまちゃんに勢いよく棒を渡され、恐る恐るトライしてみる私。


叩こうとすると鮭は、砂浜を大きく飛び跳ねた。





ぎゃー。怖いって!!



大騒ぎしていた私達は、浜辺でも目立っていたようだ。
「魚を踏んで叩け。」
周りのみんなが、親切に教えてくれる。


怖い、怖い、怖い!!

ギャーギャー叫びながら、必死で叩く私。
そんな私の姿を写真まで撮る、くまさん。



「もう死んでるって。」
さっきのお兄さんから、ツッコミを入れられてしまった。





怖いのは、私か。



サーモンを一匹獲り終え、すっかり満足してもう川にも入らず椅子に座り、リーガンを待つ私。
一匹獲ったから、もういい。大満足。帰ってもいいくらいだよ。




買い物から帰ってきたリーガンは、その鮭を見て、やったやったと喜んでくれた。
しかし、その後リーガンが川に入ったら鮭がたくさんやって来て、休む間もないくらい次々と鮭が獲れた。

どんどん溜まる、リーガンが獲った鮭。

島出身なのに、魚の切り身しか触れない私。
「私は魚を捌けない。リーガン、自分で処理してよ。」
そう言っていたのに、必要に迫られて、浜辺で鮭の頭を落とし、内臓を取り出す処理をした。

ずっとした。
泣きながらした。




もうこれは、趣味を超えてるよ。
鮭、怖い。
アラスカ恐るべし。




結局収穫は、鮭40匹。
そのうち私2匹、リーガンが38匹。



どんどん獲れる鮭を目の前にして、リーガンがつい言ってしまった一言。
「メルモ、2匹だけ?俺がいない間、いったい何してたの。」




がーーん。

私が最初に獲った鮭を、あんなに喜んでくれたリーガンはどこに?



家に帰ってからも、魚処理は続く。
切り身にし、真空パックにし、スモークサーモンにし。
毎日夜中の2時まで、作業に追われる私達。


アラスカのサーモン作業。
本当に、趣味を超えてます。
まだまだアラスカには、驚かされてるな。


チャーリー・ユーコン川下り 最終回 〜感動のゴール〜


翌日は快晴。
久しぶりのベッドで心地よく眠り、起きた時にはすでに朝の9時を過ぎていた。


昨夜発見した、キャビンのゲストブック。
そこには、ユーコンから流れてここに辿り着いた人達のメッセージが、たくさん寄せられていた。

色鉛筆で描かれたプロ級のイラストや、面白い漂流記。そして、外国語で書かれた物もあった。
日本人の書き込み、多数。
1998年の日付から残っていて、何度もここを訪れている人の名前もある。
みんな、このキャビンは豪華だ、素晴らしいと書いてあった。


もちろん私も、ノートに書いた。
そのメッセージは、



イサオさん行方不明。どこにいるんだ、イサオ!!


ここを見ている人で実際このノートを読んだ人、ぜひ私に連絡して欲しい。(いないか。)

朝の支度を終え、ぼーっと窓の外を見ていたその時、人が通った。




第2ユーコン人、発見!!


興奮して外に出ると、20代後半くらいのカップルだった。
2人はフェアバンクスに住んでいる夫婦で、カナダのドーソンシティから出発して昨日ここに着いたらしい。少し離れたもう一つのキャビンの方に泊まっていると言った。
とてもフレンドリーな人達。

しかし私は、その女性を見た瞬間から、どうしても気になって仕方なかった。


この女性、お腹が大きい。

妊婦?




いやいや、まさかね。
だって、ユーコン川をカヌーでここまで来てるんだし、今日は9日目と言ってたし。
きっとお腹だけ太っている女の人だ。アメリカ人だから、あり得る。



しかし2人が去って、後でやって来たフォレストレンジャーから衝撃的な真実が明かされる。




あの人、妊娠7ヶ月。




な、なんと!
7ヶ月のお腹で、ユーコン川下りですか。

恐るべし、アラスカ人。

フォレストレンジャーは、今日も親切。
子供達の写真を撮り、普段はイーグルに住んでるからとメールアドレスをくれた。


彼に、この仕事は好きかと聞いてみたところ、

「もちろん!面白い人達に出会えるし、こんな大自然の中に住めて、しかもお金がもらえる。」

と笑っていた。
そんな生活も、アリかな。


ちなみに彼は7年間ここで働いているが、
「チャーリー川を下ってきたのは、10代の子が一番若かった。8歳や5歳なんて、こんなチビッコは今まで見ていない。」
と言っていた。





やはり、最年少記録か?



準備をし、フォレストレンジャーにお礼を言って、ようやく出発したのは正午を過ぎた頃だった。

ユーコン川は、やはり流れが速かった。
チャーリーで、あんなに苦労したのは嘘のよう。
漕がなくても、どんどん進む。




ユーコン、楽チン!


ああ、イサオさん、今頃どこへ?
でも昨日よりはずっと、イサオさんは大丈夫という気持ちが強い。
彼は先にサークルに行って、私達を待っているハズ。

そう確信してるから、リーガンと2人冗談さえ言い合うようになる。



イサオさん、本書くって言ってたもん。
きっと最後に、イベントが欲しかったんだよ。

そうだよ。こんなウルサイ家族から離れて、一人孤高に、またムズカシイ事でも考えたかったんだよ。

きっと、そうだ。




そうに違いない。

そんな事を言いつつ、ラフトは西へと進んでいった。



途中、風が強くなってきた。
「タープを帆の代わりにしたら、もっと進むかも。」
リーガンの提案に、ムサシの目が輝く。


帆走作戦、開始。

風に煽られ、ラフトのスピードアップ!
速い速い!

ムサシは最高の笑顔を見せる。

アラシもダディのサポートで、帆を張るお手伝い。

いいね、いいね〜。ホントに漂流している気分。


私達のラフトは、どんどん進む。
イサオさんを探すためにも、今日中にゴールのサークルに到着したい。

食事の時間を短縮するため、昨夜リーガンが大量のケサディーヤを作ってくれた。
それを食べ、昼寝をし、読書やトランプやゲームをしながら、ラフトはどんどん進んでいった。


気持ちよく、ウトウトしていた時に、
「わー、熊だ!」
リーガンが叫んだ。

見ると山の方、何か黒い物が動いている。

おおー!ホントだ。熊だ!!

黒熊は、あっと言う間に山の中に姿を消していった。



見ましたよ、熊。
よかったよ。最後に見れて。
こんな遠くからなら襲われる心配もないので、とっても嬉しい。


他には、鮭を獲っているこんな仕掛けを何回も見た。

鮭を獲りに来る、モーターボートもよく見かける。

でも予想してた程、カヌーはいなかった。
あの先に出た、妊娠アラスカ人カップルを一度追い越しただけ。他にはいなかった。
カヌーイストの憧れの地のハズなのに。
いったい、みんなどこよ?

ラフトの上に10時間。
その日はなんと、1日で53マイルも進んでいる。

夜の10時半を過ぎた頃、とうとうサークルが見えてきた。

双眼鏡で見たら、岸の方に赤いカヌーも見える。

イサオさんだ!!


やったー!

ついにゴール!!
岸に上がると、テントの中にいたイサオさんが走ってきた。
3時間前に、到着したらしい。

サークルシティで、シャワーを浴びる。
蛇口を捻ると、水が出る。これって、素晴らしい事だよ。


シャワーを浴び、すっきりしてから、ユーコンを眺める。
夜中1時の夕焼け。
その時出ていた月は、まん丸でとても美しかった。

みんな、ありがとう。チャーリーもユーコンもありがとう。
一生忘れられない旅になりました。

チャーリー・ユーコン川下り その9 〜いよいよユーコンへ〜


川旅4日目。
朝、早く起きて出発のはずが、誰も起きてこない。
いや、起きられない。

横になると、ぐるぐる頭が回るのよ。
周りの風景が横に流れる流れる。テントで寝てるのに、まだ川の上で漂流している感じ。






・・・かなりキテルね。

もう疲労もピークだ。


乗ってるだけでこうなのだから、船を操縦しているリーガンやイサオさんは、相当疲れている事だろう。



動きも遅い。ノロノロと準備をし、出発した頃にはもう正午になっていた。

今日は、いよいよユーコン川に入る予定。
山火事の方向にも、どんどん近づいている。

3時半に、ランチの時間。
疲れていたのと火事の心配から、お湯を入れるだけの「テリヤキチキン」と「テリヤキビーフ」で簡単にすました。
昼食の後、子供達は棒を拾ってきて遊ぶ。武蔵という名前だけに、チャンバラごっこが好きらしい。
山火事をバックに、剣を振りかざす。


もうすぐユーコン川だ。あと1時間くらいで、チャーリーがユーコン川に合流している所まで着くそうだ。
ユーコン川はとても人気があって、カヌーイストの憧れと言われている。ユーコンに来る外国人では、ドイツ人と日本人が最も多いらしい。


「ユーコンで初めて人に会えるのは、何時くらいかな。」
イサオさんが呟く。
今までチャーリーリバーに降り立ってから、家族とイサオさん以外の人を見ていないのだ。







いよいよ、人間にも会えるぞ。

そんな話をしていたら、雲行きがだんだんと怪しくなってきた。これは一雨来そうだな。
私達はレインコートの用意をし、また川へと戻ったのだった。



川に出て少しして、やはり雨が降ってきた。
それも大雨!

だんだん激しくなり、大きな雨の粒が身体に当たる。
痛い。





これは痛い。痛い雨だ!


そんな激しい雨の中、リーガンは力強くオールを漕ぐ。
急いでここを、抜け出さなければ。


雨、脱出。


ほっとしていると、寒いとアラシが泣き出した。
ラフトの上で着替えさせ、ようやく落ち着いた頃にユーコン川が見えてきた。

やったー!ユーコンだよ。


広いねー。大きいよ。
そして、水がいっぱい。湖のように深いよ。


イサオさんも、後ろから笑顔でやって来た。
アーモンドチョコレートで、お祝い。
今までも何か達成したり、一日の疲れを取るのに、チョコで乾杯してきたのだ。

イサオさんにはオールの上に乗せて渡す。

オメデトー!
とりあえず、第一目標のユーコンに出たね。




ユーコンは、とにかくデカかった。
川の幅が、ハンパじゃない程大きい。
今までのチャーリーリバーと大違いだ。

そして、流れがとっても速い。
速いよ、速いよ。
川岸の景色が、びゅんびゅん遠ざかるよ。

何もしなくても、ラフトがどんどん先に進む。
オールを中に入れ、リーガンもしばらくユーコンの景色を眺めていた。


そうしているうちに、またも雨。
「早く、このタープの下に潜って。」
リーガンが、秘密兵器を出してくれた。

また痛くて冷たい雨に濡れるのは嫌なので、子供達と私はこの中に入る。
タープの下は暖かかった。そしてわりと明るいので、読書したりトランプしたり。

おお〜。これは便利。
リーガンよ、何故早くこれを出してくれなかったのだ。




しばらくタープの下に潜っていた。
やっと雨が上がり、ようやく外の景色を見る。
そこに、イサオさんの姿はなかった。




「イサオはずっと後ろの方にいるよ。多分、こっちにも気付いていたはず。」
と言うリーガン。
だいぶ前に、イサオさんを見たらしい。


ユーコンの、この川の大きさと流れじゃあ、見失うのもすぐだ。
チャーリーの時なんて、イサオさんが先に行って私達を待ってるなんて事も度々あったが、道は一つしかないし簡単に見付けられた。
でもここは広大なユーコン。中州もいっぱいある。
側にいないと、すぐ見付けられなくなってしまう。




その時リーガンが、岸にキャビンを発見した。
ラフトを岸に寄せ、キャビンを見上げる。
2階建ての立派なキャビンだ。


「イサオは必ずここを通るから。このラフトを見たら、止まるから大丈夫。天気も悪いし、とりあえずあそこに行ってイサオを待とうよ。」
ラフトを岸に上げ分かりやすい場所に置き、キャビンまで行ってみる事にした。
このキャビン。「SLAVEN'S ROADHOUSE」と書いてあった。
中に入ってみると、そこには人がいた。






人間だ!

第一ユーコン人、発見!!


この男性は、フォレストレンジャーだと言った。このチャーリー・ユーコン国立公園を保護するのが仕事で、このキャビンに月の2週間泊まっているらしい。

キャビンは公共の施設だから、誰でも無料で泊まれるとも言った。




タダ?こんな立派な所が。



興奮しつつ中を見てみると、1階部分にはベッドと机。そして2階には、2段ベッドが2つと、キッチンまであった。


キッチンだよ!
プロパンガスのオーブンに冷蔵庫まであるんだよ。





今まで7日間も野宿してきた私達にとって、ここは高級ホテル。


ラスベガスのシーザーズパレス、いや、東京の赤坂プリンスホテルだ。
今夜ここに泊まる事は、もちろんすぐに決定した。



それでもとにかくイサオさんの事が心配なので、雨の中を外で川を見てずっと待った。
待ったけど、来ない。
1時間経ち、2時間経っても来ない。

イサオさんが来ない。


どこにいるんだ、イサオさん!









なんという事。

イサオ、行方不明。


がーん。
どどど、どーすんのよ。
いったいどこに行ったんだ、イサオさん。

やっとユーコンまで来たのに、こんな所でいなくなってしまうなんて。





とにかく、あのフォレストレンジャーに報告する。

レンジャーは、
「とにかく朝まで待て。朝になったら、飛行機で巡回しているレンジャーに連絡するから。」
と言った。




リーガンは、
「イサオなら、大丈夫。」
と言う。

「ここで探しに行ったりしたら、流れが速いから余計危ない。今夜はここに泊まり、明日ゴールのサークルまで行って、いなかったら警察に電話しよう。ジェイソン(友人)と、飛行機で捜索も出来るし。
イサオなら、一泊くらい1人で大丈夫だから。イサオも、俺がいるから大丈夫だと信じて、探したりしないでそのままサークルに行ってて欲しい。」



・・・そうだよね。イサオさんなら大丈夫だよね。
彼のサバイバルスキルなら、1人でも生きていけるよね。


ちょっと、頭の中で計算してみる。
ゴールはサークルだと知ってるし、GPSもイサオさんが持っている。
今朝リーガンが、イサオさんがなくしたという熊スプレーを貸してあげていた。
熊はあれで、大丈夫なはずだ。

食料は?
そう言えば、イサオさんの非常食の米を、初日に食べてしまったな。でもまだ、半合ぐらい残っていると言ってた。
本当は昨日ご飯が食べたくて、一合ぐらいあるならちょうだいと言おうとしてたんだ。






よかったよ、米取ってしまわなくて。

殺すところだった。






それでもまだ、イサオさんがひょっこり現れるんじゃないかと、雨の上がったユーコンをずっと眺めていた。


「あー、こんないい所。イサオがいればもっと楽しかったのに。」
大丈夫だと言っても、リーガンも心配。
イサオさんの心配がなければ、高級ホテルキャビンを100%は楽しむ事が出来たのに。


それでもその夜は、久しぶりにキッチンで(リーガンが)ディナーを作り、ベッドで朝までぐっすり眠れたのだった。




さて、家族は無事にゴールまで辿り着く事が出来るか?
そして、行方不明のイサオさんの運命はいかに!?
次回、いよいよシリーズ最終回です。

チャーリー・ユーコン川下り その8 〜ロングラン〜


翌日も、6時起床。
まだ寝ているアラシをそのままの形で外に出し、テントを片付ける。
アラシは何も気付かず、ぐっすりと寝ている。
しばらく静かに寝てて、起きるや否や、
「ダディ、ケーキはどこ?」


アラシって、100%動いているか寝ているかのどちらかだな。



急いで用意をして、昨夜のアップサイドダウンケーキを食べ、9時半に出発した。

川の流れはいい感じ。
前3日間と比べると、はるかに違う。
漕がなくても乗ってるだけで、前に進んでくれるところもある。


川の上での〜んびりと過ごした。
居眠りしたり本を読んだり、ジェスチャーゲームやクイズを出し合って遊んだり。


私は寝そべって、持って来た単行本を開いた。
柴門ふみの「男性論」。

芸能界のいい男が、ずらりと紹介されている本だ。
いい男とは何か?淡々と語られてて面白い。


ふむふむ。何だか男性について、分かってきたぞ。
だけど柴門さん、チャーリーリバーをサバイバル出来る男以上のいい男って、本当にいるのでしょうか?


寝転んで本を読んでいたら、もうそこは自分の部屋気分。
こんなアラスカの大自然の中にいる事も、すっかり忘れてしまってたよ。

イサオさんは、カヌーに釣り竿を付けて、魚釣り。
リーガンも、このちょっとの間の休める時間を楽しんでいた。

岸の方には、白頭鷲の姿が。勇ましい。

そしてもう少し先には水を飲みにきたムースが、私達の方を驚いて見ていた。

他にも、ビーバーを見た。
川の上になんか大きな動物の影が見えると思ったら、バシャンと大きな音をたて、水の中に潜っていった。

ちょうどお昼頃、イサオさんがグレイリングをまたゲット!

やったー!

先に行って昼食地を見付け、魚の天ぷらを作ってくれると言う。

テンプラ、テンプラ♪
小躍りしたい程、嬉しい。

岸で食べた天ぷらは、それはそれは美味しかった。

「美味い!!」
何度も叫んでしまうほど。

天ぷらは、小麦粉がないのでパンケーキの粉で作る。
キャンプに来たら、ある物でみんな代用。

その日は暖かく、水も透き通っていい気持ち。
子供達は川に入って、水をかけ合いながら遊んでいる。

幸せな風景だなぁ。


そしてまた、川へと向かう一行。
目指すは、とりあえずユーコン川。ユーコン川に入ってから、そこから60マイル弱でゴールのサークルシティだ。
ユーコンは流れがもっと早いと聞いているし、あそこまで行けばきっと大丈夫だ。


しかし前方に、なんだかモクモクと煙が見えてきた。
山火事だ。

いったいどこだ?
私達の行く方向か?大丈夫か?

これは、旅を続けられるのだろうか。
火事のせいで、途中棄権とかになったら嫌だなぁ。


そこから9時まで川を進む。
夕食に一度止まって、また10時に川に出る私達。
すごいよ。もうこの時点で、ラフトの上に今日は10時間以上。
私達ってタフだな。


ここから先が、すごかった。
川は狭くなり、木がたくさん倒れているような、ジャングル地帯へ。

そこは蚊だらけ。
見た事もない程たくさんの蚊が、どこからともなく襲ってくる。
どこもかしこも、蚊。
多すぎて、真っ黒になっている。



まさに、蚊地獄。



ぎゃー。

リーガンがタオルを振って、蚊を追い払う。
みんなで立ち上がり、一緒にタオルを振りまわして参戦。
子供達は大笑いだったけどね。

家族全員で、一心不乱にタオルを振る。




端から見れば、何かの儀式?



蚊地獄をやっと越えて、戦い疲れた子供達はぐっすりと寝てしまった。



そのままずっと進むが、先に行ったイサオさんの姿が見えない。
彼は、キャンプ地を見付け私達のテントをたててくれると言って、先に行ってしまった。

キャンプするのにいい砂浜を何回か通り過ぎた。
時間はすでに、あと少しで夜中の12時半。

イサオはいったい、どこだ?



広い砂浜で、ようやくイサオさん発見。
もうテントをたて、キャンプファイヤーも用意されてた。


「ごめんなさい、止まるの遅くなって。よさそうな砂浜に一度降りたんだけどね。」
リーガンに謝るイサオさん。


「そこには新しい熊の足跡が何個もあったから、急いで逃げてきた。」





熊!?


熊の気配か。
山を下りてきて、確かに今にも熊が出そうな雰囲気が、一層濃くなっている。


前は私達の家族とは離れた所にテントを張っていたイサオさんが、今日は寄り添うように、ぴったりと側にテントを張る。

「実は熊スプレーを、B24ハイキングの途中で落としてしまってね。熊と戦うにも、武器がない。」


な、なんという告白だ。

そうか、イサオさんも熊は怖いか。


その日は25マイル進んだ。
イサオさんは、15時間以上もウェットスーツを着ていたとボヤいていた。
ユーコンと合流している地点まで、あと 14マイル。


身体は疲れているけど、なんか気持ちが充実してて、キャンプファイヤーを3人で囲み、人生とはとか生き方とか前向きに語ったいい夜だった。
プロフィール

Nami

Author:Nami

アラスカ在住。

アメリカ生活19年。(いつの間にか)
99年に島根県隠岐の島で知り合ったアメリカ人リーガンと結婚し、テキサス移住。
2006年に夫の思い付きでまさかのアラスカお引越し。
息子は2人。(ムサシ&アラシ)
アンカレッジの山の家に住んでます。

夏はアウトドアで遊び、冬はひたすらジムに通う。
現在は、釣りとズンバに夢中。


「心も身体も健康に。毎日ハッピー」が私のテーマ



*ズンバインストラクター
アンカレッジでズンバクラスをしてます。ぜひ参加して下さい!
初心者大歓迎。

ズンバクラスのページ






*西邨マユミ アラスカ支部マネージャー
アラスカでプチマクロお料理教室してます。お仕事の依頼は
AKiroiro@gmail.com
まで。







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