高速で滑った日

(写真は本文と関係なし。昨日生まれたばかりのうちのヒヨコちゃん。ムサシが可愛いから載せてと言うので、癒し写真。)
実は先週、高速道路を運転していて怖い経験をした。
その日は朝から雨や雪が降り、道路が凍結してとても危険な状態だった。
子供を学校に連れて行く道で、何台もの事故している車を見た。緊張して運転していた。
子供を学校に無事おろし、帰り道の高速道路。
前の車が急に車線変更してきて、スピードが間に合わなかった。
慌てて隣のレーンに移ろうとして、スリップ。
車はよろよろと蛇行しながら滑っていく。
全然ハンドルが効かず、どうにもならない。コントロール不可能!!
そのまま180度ぐるっと回り、車は中央分離帯でようやく止まった。
怖かったーーーー!
いや、怖いってもんだけじゃない、心臓が止まるかと思った。
周りに車がいなかくて本当によかった。
止まった所が道でなく、中央帯でよかった。もうちょっと前ならガードレールもあったのに、何にもない所で本当によかった。
何にもぶつかってないし、身体も車も無事。
子供も乗ってなくてよかった。
しかし、これからどうしよう。
ビュンビュン車が飛び交う道で、反対側を向いてぽつーーんと取り残される私。
車を動かそうとしたけど、そこは雪や泥でぐちゃぐちゃなぬかるみの中。エンジンはかかるが、車は動かない。
携帯も、持っていない。
ちょうど出口付近で危ない場所なので、他の車は停まってくれない。
大ピンチ!!
落ちつけ、落ちつけ自分。
いつまでもこうしてても仕方ないので、とりあえず車を出た。
確認し、きゃーっと言いながら高速をダッシュで走る。
どこかで電話を借りなければ。
高速の横の丘を越えた所は、住宅街だった。
その時、天使か女神の声を聞いた。
「こっちよ〜!こっちに来なさい。」
見ると、少し離れた黄色の家の2階から女性が私に手を振っている。
「大丈夫?電話ならここにあるから。早く暖かい私の家に入って来て。」
その家に向かって泥の中を歩いていくと(この時期、アラスカは雪が融けて道がぬかるんでいる。)、その人も外に出て迎えに来てくれていた。
その50代後半くらいの女性デボラさんは、ショックで腰が抜けそうな私を見ると、まず何も言わずにハグをしてくれた。
その日デボラさんは、2階の窓から白頭鷲を見ていたそうだ。
そしたら、高速道路を車がぐるぐる回っているのを発見!
一部始終見ていて、私が携帯を持っていなくて困ってる様子が分かったそうだ。
リーガンと連絡がつき迎えに来るまでの1時間、ずっと暖かいデボラさんの家で待たせてもらった。
彼女は、7年前にご主人を癌で亡くし、思い出のある場所にいたくなくてハーレーでワイオミング州からやってきたらしい。(50代でハーレー!!)
今は大切な人に囲まれ、家の近所にやって来るムースや白頭鷲やダックを見ながら幸せな気持ちで生活しているそうだ。
アラスカの鳥の話を熱く語る彼女を見て、この人となら仲良くなれると思った。
デボラさんにお礼を言って、リーガンと事故現場に戻ってみた。
車はやっぱり、高速の真ん中の中央帯にぽつーんと置いてある。
反対側の道に、チャンネル11(テレビ局)の車が停車していた。
ま、まさか、私の車の映像撮ってるとか?
この時期、どんなに道が危なかったか、よくニュースに事故ってる車が映っているのだ。
私達が来たのを見たのか、テレビ局の車は消えた。
リーガンが様子を見ていたら、大型のトラックが停まってくれた。
こんな、停まりにくい場所に、ありがたい。
車から出てきてくれた、スーパーマン(に見えた背の高いお兄さん)。
何も言わず分厚い軍手をして車を引っぱる綱を出し、そのぬかるみの中にGパンの膝をついた。
足なんて泥だらけだよ。
そんな事、気にもせず。
いったい貴方は何者?こんなにいい人過ぎて、いいの?
車は無事に引き出され、スーパーマンは爽やかな笑顔を残し、去っていった。
アラスカには、本当にあったかい人達がいるな。
昨日、玉子とお礼を持ってデボラさんを訪ねた。
デボラさんは、
「困った人がいたら助けるのは当然。私も7年前辛い時に、ここに来てたくさんの人に助けられてきた。誰かを助けたら、自分もまた誰かから助けられる。」
と言っていた。
ああ、そうか。そうなんだ。
怖い目にあったけど心が暖かい人達に出会えたし、暖かい行動も目にしたし、もしかしたらラッキーな日だったのかも、とも思った。