チャーリー・ユーコン川下り その9 〜いよいよユーコンへ〜


川旅4日目。
朝、早く起きて出発のはずが、誰も起きてこない。
いや、起きられない。

横になると、ぐるぐる頭が回るのよ。
周りの風景が横に流れる流れる。テントで寝てるのに、まだ川の上で漂流している感じ。






・・・かなりキテルね。

もう疲労もピークだ。


乗ってるだけでこうなのだから、船を操縦しているリーガンやイサオさんは、相当疲れている事だろう。



動きも遅い。ノロノロと準備をし、出発した頃にはもう正午になっていた。

今日は、いよいよユーコン川に入る予定。
山火事の方向にも、どんどん近づいている。

3時半に、ランチの時間。
疲れていたのと火事の心配から、お湯を入れるだけの「テリヤキチキン」と「テリヤキビーフ」で簡単にすました。
昼食の後、子供達は棒を拾ってきて遊ぶ。武蔵という名前だけに、チャンバラごっこが好きらしい。
山火事をバックに、剣を振りかざす。


もうすぐユーコン川だ。あと1時間くらいで、チャーリーがユーコン川に合流している所まで着くそうだ。
ユーコン川はとても人気があって、カヌーイストの憧れと言われている。ユーコンに来る外国人では、ドイツ人と日本人が最も多いらしい。


「ユーコンで初めて人に会えるのは、何時くらいかな。」
イサオさんが呟く。
今までチャーリーリバーに降り立ってから、家族とイサオさん以外の人を見ていないのだ。







いよいよ、人間にも会えるぞ。

そんな話をしていたら、雲行きがだんだんと怪しくなってきた。これは一雨来そうだな。
私達はレインコートの用意をし、また川へと戻ったのだった。



川に出て少しして、やはり雨が降ってきた。
それも大雨!

だんだん激しくなり、大きな雨の粒が身体に当たる。
痛い。





これは痛い。痛い雨だ!


そんな激しい雨の中、リーガンは力強くオールを漕ぐ。
急いでここを、抜け出さなければ。


雨、脱出。


ほっとしていると、寒いとアラシが泣き出した。
ラフトの上で着替えさせ、ようやく落ち着いた頃にユーコン川が見えてきた。

やったー!ユーコンだよ。


広いねー。大きいよ。
そして、水がいっぱい。湖のように深いよ。


イサオさんも、後ろから笑顔でやって来た。
アーモンドチョコレートで、お祝い。
今までも何か達成したり、一日の疲れを取るのに、チョコで乾杯してきたのだ。

イサオさんにはオールの上に乗せて渡す。

オメデトー!
とりあえず、第一目標のユーコンに出たね。




ユーコンは、とにかくデカかった。
川の幅が、ハンパじゃない程大きい。
今までのチャーリーリバーと大違いだ。

そして、流れがとっても速い。
速いよ、速いよ。
川岸の景色が、びゅんびゅん遠ざかるよ。

何もしなくても、ラフトがどんどん先に進む。
オールを中に入れ、リーガンもしばらくユーコンの景色を眺めていた。


そうしているうちに、またも雨。
「早く、このタープの下に潜って。」
リーガンが、秘密兵器を出してくれた。

また痛くて冷たい雨に濡れるのは嫌なので、子供達と私はこの中に入る。
タープの下は暖かかった。そしてわりと明るいので、読書したりトランプしたり。

おお〜。これは便利。
リーガンよ、何故早くこれを出してくれなかったのだ。




しばらくタープの下に潜っていた。
やっと雨が上がり、ようやく外の景色を見る。
そこに、イサオさんの姿はなかった。




「イサオはずっと後ろの方にいるよ。多分、こっちにも気付いていたはず。」
と言うリーガン。
だいぶ前に、イサオさんを見たらしい。


ユーコンの、この川の大きさと流れじゃあ、見失うのもすぐだ。
チャーリーの時なんて、イサオさんが先に行って私達を待ってるなんて事も度々あったが、道は一つしかないし簡単に見付けられた。
でもここは広大なユーコン。中州もいっぱいある。
側にいないと、すぐ見付けられなくなってしまう。




その時リーガンが、岸にキャビンを発見した。
ラフトを岸に寄せ、キャビンを見上げる。
2階建ての立派なキャビンだ。


「イサオは必ずここを通るから。このラフトを見たら、止まるから大丈夫。天気も悪いし、とりあえずあそこに行ってイサオを待とうよ。」
ラフトを岸に上げ分かりやすい場所に置き、キャビンまで行ってみる事にした。
このキャビン。「SLAVEN'S ROADHOUSE」と書いてあった。
中に入ってみると、そこには人がいた。






人間だ!

第一ユーコン人、発見!!


この男性は、フォレストレンジャーだと言った。このチャーリー・ユーコン国立公園を保護するのが仕事で、このキャビンに月の2週間泊まっているらしい。

キャビンは公共の施設だから、誰でも無料で泊まれるとも言った。




タダ?こんな立派な所が。



興奮しつつ中を見てみると、1階部分にはベッドと机。そして2階には、2段ベッドが2つと、キッチンまであった。


キッチンだよ!
プロパンガスのオーブンに冷蔵庫まであるんだよ。





今まで7日間も野宿してきた私達にとって、ここは高級ホテル。


ラスベガスのシーザーズパレス、いや、東京の赤坂プリンスホテルだ。
今夜ここに泊まる事は、もちろんすぐに決定した。



それでもとにかくイサオさんの事が心配なので、雨の中を外で川を見てずっと待った。
待ったけど、来ない。
1時間経ち、2時間経っても来ない。

イサオさんが来ない。


どこにいるんだ、イサオさん!









なんという事。

イサオ、行方不明。


がーん。
どどど、どーすんのよ。
いったいどこに行ったんだ、イサオさん。

やっとユーコンまで来たのに、こんな所でいなくなってしまうなんて。





とにかく、あのフォレストレンジャーに報告する。

レンジャーは、
「とにかく朝まで待て。朝になったら、飛行機で巡回しているレンジャーに連絡するから。」
と言った。




リーガンは、
「イサオなら、大丈夫。」
と言う。

「ここで探しに行ったりしたら、流れが速いから余計危ない。今夜はここに泊まり、明日ゴールのサークルまで行って、いなかったら警察に電話しよう。ジェイソン(友人)と、飛行機で捜索も出来るし。
イサオなら、一泊くらい1人で大丈夫だから。イサオも、俺がいるから大丈夫だと信じて、探したりしないでそのままサークルに行ってて欲しい。」



・・・そうだよね。イサオさんなら大丈夫だよね。
彼のサバイバルスキルなら、1人でも生きていけるよね。


ちょっと、頭の中で計算してみる。
ゴールはサークルだと知ってるし、GPSもイサオさんが持っている。
今朝リーガンが、イサオさんがなくしたという熊スプレーを貸してあげていた。
熊はあれで、大丈夫なはずだ。

食料は?
そう言えば、イサオさんの非常食の米を、初日に食べてしまったな。でもまだ、半合ぐらい残っていると言ってた。
本当は昨日ご飯が食べたくて、一合ぐらいあるならちょうだいと言おうとしてたんだ。






よかったよ、米取ってしまわなくて。

殺すところだった。






それでもまだ、イサオさんがひょっこり現れるんじゃないかと、雨の上がったユーコンをずっと眺めていた。


「あー、こんないい所。イサオがいればもっと楽しかったのに。」
大丈夫だと言っても、リーガンも心配。
イサオさんの心配がなければ、高級ホテルキャビンを100%は楽しむ事が出来たのに。


それでもその夜は、久しぶりにキッチンで(リーガンが)ディナーを作り、ベッドで朝までぐっすり眠れたのだった。




さて、家族は無事にゴールまで辿り着く事が出来るか?
そして、行方不明のイサオさんの運命はいかに!?
次回、いよいよシリーズ最終回です。
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No title

ちょっとドキドキなんですけど
イサオさんはどこに?どこに行っちゃったの?
早く次が読みたーい

No title

次回で最終回なんだ~! なんか連続ドラマを見ているようだったよ。
とっても楽しみました。 毎回 旦那とか会社の人に翻訳大変だったけど(笑)。 次回が楽しみ!!

No title

やっぱりもうひと波乱ありましたね~(^^ゞ
『苦あれば楽あり、楽あれば苦あり』 の旅ですね!
しかしイサオさんはどこに行っちゃったんでしょう?

No title

ゴール目前にして、またもハプニング。イサオさんどこにいるの~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

No title

すごいですね~~。 これは、大冒険ですね!!
こんな大冒険の生のリポートなんて、今まで見たことないので、
かな~~りハマっています。
昨夜は、旦那も読んでました。
イサオさん、大丈夫でしょうか~~?

No title

イサオさん!!!!!
こんな雄大なユコン川で行方不明になってしまうとは!!!

イサオさあああん!!!!
続きが気になり過ぎる終わり方です!

No title

>nanaさん
ドキドキですか。ドキドキして下さい。
イサオさん、どこに行っちゃったんでしょうね?続きは今、作成中。

>ぎんだらぎんさん
楽しんでくれて、よかった!翻訳ご苦労様です。
私も、これが終わってしまうと思うと、なんだか寂しい気持ち。

>ニャンタローさん
ニャンタローさんの期待通り(笑)、まだ事件はありましたね。
すんなり行ったら面白くない?でも、やらせじゃないんだよ。本当にあった物語です。

No title

>きすかさん
そうそう、ハプニングの連続!
最後にイサオさんを見失うとは。油断出来ない旅でした。

>鍵コメさん
メールします。どうもありがとう。

No title

>Kannajさん
ありがとうございます。そういう反応は、とっても嬉しいです。
今となっては、あんな山奥に家族だけ(+いなくなったイサオさん)でいたなんて、信じられないくらいです。
旦那様にもよろしく。

>Jackoさん
イサオさぁぁん(笑)!
この日は本当に心配しました。最初の日に浸水して、カヌーの中が水でいっぱいになった姿を思い出したりして。
続き作成、頑張ります。

No title

メルモさんおひさしぶり!ドキドキしながら読みました。続きが早く知りたいです。更新してくださ~い!

No title

Mさん、お久しぶりです。
ドキドキしてくれて、ありがとう。
ようやく最終回も書けましたよ。これで一安心。
プロフィール

Nami

Author:Nami

アラスカ在住。

アメリカ生活20年。(いつの間にか)
99年に島根県隠岐の島で知り合ったアメリカ人リーガンと結婚し、テキサス移住。
2006年に夫の思い付きでまさかのアラスカお引越し。
息子は2人。(ムサシ&アラシ)
アンカレッジの山の家に住んでます。

夏はアウトドアで遊び、冬はひたすらジムに通う。
現在は、釣りとズンバに夢中。


「心も身体も健康に。毎日ハッピー」が私のテーマ



*ズンバインストラクター
アンカレッジでズンバクラスをしてます。ぜひ参加して下さい!
初心者大歓迎。

月曜日 6pm~ Body Renew South
火曜日 6pm~ The Salvation Army Center
木曜日 12pm~ The Salvation Army Center



ズンバのページ






*西邨マユミ アラスカ支部マネージャー
アラスカでプチマクロお料理教室してます。お仕事の依頼は
AKiroiro@gmail.com
まで。







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